近年、大学受験の風景は大きく変化しています。一般入試よりも推薦入試の比率が高まり、一般受験がますます難しくなっています。本記事では、高校生の皆さんに向けて、推薦入試の増加の背景について私見を述べます。
なぜ推薦入試の比率が高まっているのでしょうか?
その要因の1つ目は少子化のために大学が学生を早期に確保する必要があることです。近年、少子化により大学の経営は厳しくなっています。首都圏私立大学の定員厳格化もその影響によります。
2つ目は、「優秀な学生」の定義が変わりつつあることです。
それを象徴するお話がノーベル賞の自然科学部門の受賞者数です。ノーベル賞の受賞者が一番多い大学はアメリカのハーバード大学で、2000年以降100人以上です。日本で一番多い大学は京都大学で12人(世界15位)、東京大学は4人です。
ノーベル賞が全てではありませんが、大学も偏差値が高い学生が優秀な学生なのか疑問を持ち始めています。
例えば、東大に合格するためには、数学の問題を徹底的に訓練して暗記できることは暗記して解くスピードを極限にまで追求することが必須です。積分の計算を愚直にやっているようでは間に合わないので、いわゆる6分の1公式は常識で、12分の1公式、30分の1公式などもあります。こうした、テクニックを身につけなければならないのが難関大学受験の世界です。
こうした高偏差値の学生はある意味優秀なのですが、大学で学ぶ上での優秀さとは少しずれている。そうしたことを大学側も薄々気づき始めたのではないでしょうか。
意外かも知れませんが、入学試験の偏差値(アメリカでは偏差値は使いませんが話を分かりやすくするために、ここでは敢えて偏差値といいます)ならば、東大がハーバード大に勝ちます(英語以外)。なぜなら、ハーバード大の入試は推薦に入試なので偏差値が低くても合格可能だからです。なお、世界大学ランキングは偏差値の高さのランキングではありません。
東大で最難関の理科Ⅲ類の出身でノーベル賞を取った人はいません。つまり、東大は偏差値では「優秀」なのですが、どうも研究で「優秀」とは言えないのではないか、ということが感じられるのではないでしょうか。私は東大理Ⅲ的な優秀さは受験以外で役に立たないのではないかと最近は思っています。
ハーバード大の入試はいわゆる推薦入試で偏差値はありません。東大に入るためには筆記試験を極めないと無理なのですが、そこまで極めても仕方がない(研究者として優秀とは限らない)とも言えます。ともあれ、今後推薦入試の比率は高まり、一般入試の比率は低くなりそうです。
2023年05月15日 12:47