「キーワード拾い読み」をしていませんか。
<問題>Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択
肢①~④のうちから1つ選びなさい。
Alexandraの愛称は( )である。
① Alex、 ②Alexander、 ③男性、 ④女性
<問題終わり>
正解は①です。
これは、とても有名な問題で、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」という本の中で紹介されている「リーディングスキルテスト(RST)」の設問の1つです。
この問題は、本書の著者が独自に開発した、主に日本の中学・高校生の基礎的読解力を調査するためのテストです。
この問題では主語と述語や修飾語と被修飾語の関係を正しく読み取れるかを試しています。
著者が収集したデータ集計によると、全国の高校生432人で正答したのは65%、中学生235人では38%でした。
中でも中学1年生は23%の正答率しかないそうです。誤答で多かったのは④で、高校生では26%、中学生の39%、中学1年生は約半数の49%がこちらを選びました。
たった二行の問題文が正しく読めない人たちが少なからず存在するという意味で世間に衝撃を与えました。
以下は私の推測ですが、いわゆる「キーワード拾い読み」なる方法で読んでいるのではないかと、推測しました。
つまり、文を読むのが面倒なので、キーワードだけに目をつけて、そのキーワードを自分の頭の中で適当につなぎ合わせて分かったつもりになっているのではないか、
あるいは、わかっていないと自覚しながら「面倒だから適当でいいや」と済ませているのではないか、ということです。
では、「キーワード拾い読み」て上記の問題を解くとどうなるでしょうか。
まず、問題文をざっと眺めます。「なんやらゴチゃゴチゃと面倒なことが書いているな」と感じるのでしょう。
次に設問を見ます。これは短文なので何とか読めるのでしょう。「Alexandraの愛称」という英単語が目につきます。
これをキーワードだととらえて、再び問題文を読むと「女性の名Alexandraの愛称」という塊が目に入ります。
この結果、穴埋め文の「Alexandraの愛称」と問題文の「女性の名Alexandraの愛称」を見比べて「女性」すなわち④を正答だと考えてしまうのではないでしょうか。
高校生の2割以上、中学生の4割がこの「キーワード拾い読み」をしているかも知れません。
高校生が少ないということは、キーワード拾い読みを卒業している生徒が一定割合でその読み方を卒業しているのかも知れません。
あるいは、著者が比較的偏差値の高い高校生のデータを収集してしまったのかも知れません。後者だとするとデータ収集のやり方が不適切だということになります。
ともあれ、私が「キーワード拾い読み」を疑っているのは、英文を正しく読めない生徒がこの読み方をしている例に多く当たってきたからです。
英文ならばネイティブでないのであり得る話ですが(もちろんいけないことですが、苦し紛れにそのような読み方をする人がいるということは理解できます)、
日本語のネイティブが日本文をキーワード拾い読みしてしまうのはショッキングな出来事です。
もしかすると、ちょっとでも面倒な日本文だとキーワード拾い読みしかできない可能性もあります。
この可能性が当たっているとすると、国語教育は今のやり方では不十分です。なぜなら、読解問題の多くは、文と文の論理関係に重きを置いていないからです。
加えて、「まずは文章を一字一句きちんと読みましょう」ということは当たり前だとされていて、そもそもそこにスポットが当たっていないからです。
しかし、一字一句きちんと読むことから始めないと国語力の改善はできないことになります。
時々、定期試験の順位は良いのに、模擬試験や実力テストの順位が悪い生徒がいます。その逆もあります。
点数が悪くなるだけなら試験の難易度が上がったからだと納得できますが、順位が悪くなるというのは何らかの原因があるはずです。
模擬試験や実力テストの問題文は長文が多くなっています。もしかすると問題文を正しく読めないが故に、つまりキーワード拾い読みしかできないことが原因で順位を落としている可能性が浮上してきます。
このキーワード拾い読みの問題は、問題は大きすぎるが故に悩ましいのですが、まずは一人ひとりの生徒の問題文の読み方を探っていくことから始めたいと目下のところは思っています。
2024年11月21日 10:01